「主役じゃなかった彼に捧げるささやかな悪意の日記」のレビューを書きました。
一週間前くらいに読み終わりましたが、ちょっとバタバタしてて感想が遅れました。
まずはこの作品のあらすじから紹介。
日記形式で綴られていく、サイコホラー恋愛小説。
地味で目立つところなんて一つもない、同じクラスの坂崎くん。
彼のもう一つの顔に気づいた私に芽生えたのは、好奇心とささやかな悪意。
彼を知るためだけにあの手この手を尽くす私だったが、
膨れ上がった悪意はやがて思わぬ事態を招いていく。
ささやかだった悪意の行き着く先は?
最初はまだ普通の日記です。クラスに気になった子がいてそれを追いかけてみたというような、実際にまあ考えられるような動機ではあります。ただ、読み進めていくうちに、それが逸脱していく。タイトルの通り、悪意の固まりのような動機で行動をしていくのです。
ページをめくるほどに悪意が増幅していく。というより、主人公の内面が徐々に明らかになると言った方が正しいのでしょう。そんな日記の終着点はどうなるだろうと思ってあるページをめくると…。
うん。あれにはびっくりした。何かは見てからのお楽しみ。
そしてこのまま進むかと思いきや、途中からは展開が変わってくる。あらすじにも書かれていますね。
展開がスピーディです。分量もものすごくちょうどよかった。
こういった青春時代の微妙でいて不安定な人間関係や心情描写が巧みです。主人公の異常さというか、気持ちはわかるけどそれを実行しちゃうのかとかいう。
関係ないけど、なんか主人公の心情が「マリアビートル」という伊坂作品に出てくる王子と似ていた。
他人の心情を鑑みないサイコ的な要素はかなりそっくり(あそこまで外道ではないけど)。
先にも言ったように人間関係も上手く描写されている。凜という主人公の幼なじみがいるのですが、表面上は付き合っていても内心は…というのがリアルだった。
まあ高校時代は共学でしたので、そういった裏の女子の声もある程度は聞いています。だから男の自分でもリアルだというのがわかる。
晴海さんの甘酸っぱい青春ものしか読んでない人は、これを読んでみてください。こういったホラー系の作品もあるのです。とはいってもこれはサイコホラー。血も流れないしグロもありません。本当に幅広い作品を書く人だなあと思います。
ご飯の時間という作品はがっつりなグロですよ。ホラー成分がもっとほしいという方はそちらも読んでみてください(ゲス顔)。