男心と夏の空
心とは不定形である。
日によって変わることもあるし、人の言動によって揺れ動くことは誰にも覚えがあることだ。
中には「向上心のないものは馬鹿だ」と言われて自殺をしてしまう人もいる。これだけを抜き取れば、どうして? と思うかも知れないが、この著作を読んだ方はわかるだろう。つまりは状況、そして込めた思いというものが彼の心に働きかけて、自殺を決意させたのである。
これと似たことを、俺を体験した。いや、もちろん相手は自殺はしていない。
付き合っていた彼女が、ある些細な切っ掛けで連絡が取れなくなってしまった。たった一言で。
いや、正直全く彼女を傷つけようとして言ったわけでは無い。日常会話で茶化そうと言っただけのことだ。それがどうして彼女の心を傷つけたのだろうか。
彼女とは、夏に新宿のある場所であったのだ。
一目惚れだった。街の光に照らされる彼女が眩しかった。そこからなんとか連絡先を聞き、何度も告白し、ついに付き合うことができた。
そんな苦労して手に入れた彼女なのだから、傷つけるようなことを言うわけがない。
何が原因だったんだろうか。俺はただ「お前は男みたいだな」と言っただけなんだけどな。