初瀬明生と小説とKDPと

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一人称の語彙、比喩表現はそのキャラに合っているか

ある小説を読んで思ったことです。

 
その小説は少年が主人公です。普通に学校に通う平凡な学生です。そして一人称で話は進んでいきます。
 
地の文は当然その主人公の心の声というものなのですが、静謐だとか、忸怩たる思いとかやたら小難しい言葉を使ってきたのがすごく違和感がありました。
 
もちろんその主人公のキャラによっていくらでも正当化できます。文学に傾倒しているとか、賢いとか、そういうのならいいのですが、そんな設定もありません。普通の十六ぐらいの子供が難しい言葉を使うのは不自然だと思いました。
 
 
 
 
 
 
ずっと前、ある番組で見たときにこんなクイズがありました。直木賞作家である道尾秀介さんの『月と蟹』という本から一文を抜粋したものです。
 
 
 
一応問題を出してみましょう。
 
「次の文章の後に続く、少年の不安をもっともよく表している海の景色は?」
 
月はふたたび雲に隠れ、目の前に広がる海は―――――。
 
 
A、巨大な黒い穴だった。
 
B、波がうねり、とぐろを巻いていた。
 
C,星が冷たく光っていた。
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
正解はAです。
 
 
 
著者本人による解説ですと、主人公が少年ということで難しい表現は避けたのと、率直に不安さを表してる文章だからということらしいです。
 
表現までキャラに合わせるというのは難しい話ですね。ですが、これも前述した語彙の話と当てはまると思います。あまりにキャラに合わない表現は違和感が出ると思います。
 
 
 
 
ここまで書いておきながら、自分も自信はないです。語彙については、その年相応のものを使うよう気をつけていますが、表現や考えなどと言われると、ちょっと自信がないです・・・。
 
 
 
 
まあ言えることは、一人称を書くときはその主人公のキャラと、語彙や表現のすり合わせをすることが大事だと思います。キャラが平凡なら平凡に、賢いなら賢いなりに。
 
正解はないです。別に年相応の言葉を使わなくても、成立するものは成立します。なんというか、そこには小説の世界観とかも関係していくと思います。西尾維新物語シリーズはその代表格でしょう。あんな少年少女が小難しい表現や語彙を使っているにも関わらず、物語は成立しているし面白いです(好き嫌いは当然分かれますが)。
 
 
総括して言えることは、その作品に表現、語彙は合っているかということ。そして
 
 
 
 
難しい表現や語彙を使うだけで頭良く見えるなんてことは、決してないということ。
 
 
 
 
 
最後のは特に言いたかった。新人の小説家は特に、なんか頑張って表現とか語彙難しいの使ってんなあって思ってしまう人がかなり多い。それを使うことだけに執着してすり合わせをしていないからだと思います。
 
いや、使うのはいいんです。ただ考えなしに使っているだけなのは、割と見透かされますからね。高価な絵も、額縁や美術館の配置にこだわりますからね。要は周りに合っているか、です。
 
 
今回は一人称の話。三人称となるとまた少し違ってくるかもしれません。